地方分権に係る基本的な考え方について

公開日 1998年11月01日

1.中核市への先導的な分権化

中核市の能力と役割について

私共地方自治体には、社会経済情勢の急激な変化による住民の行政需要に的確に対応するため、地域の実 状に応じた主体的な都市づくりが求められておりますが、とりわけ市民に最も身近な基礎的自治体である市町村が地域の総合的な行政を担っていくことが最も重 要であると認識いたしております。
このような観点から、貴委員会の勧告、あるいは地方分権推進計画においても、市町村が基礎的な地方公共団体と明確に位置づけられたところであり、併せて、 市町村の規模及び能力に応じた権限移譲の方向性が示されましたことは大変心強いことであります。
中核市においては、これまでの都市運営の経験と長年培われてきた十分な行財政能力を備えておりますし、併せて中核市移行に当たって移譲された数多くの事務 を円滑に処理している実態を十分考慮いただきますと、地方分権の受け皿として十分な能力を備えていると理解いただけるものと存じます。また一方、中核市は 自らの都市において総合的、主体的なまちづくりを進めるのみならず、周辺市町村をリードする中核都市として地域の発展に貢献するといった役割があることも 十分に認識し、現在積極的に広域行政に取り組んでいるところであります。

中核市への事務・権限の移譲について
府県から中核市への権限移譲については、これまでの論議の中で、都市計画法に基づく開発審査会の設置、宅地造成工事規制区域の指定、あるいは市町村におけ る都市計画審議会の法定化といった事務・権限についての勧告がなされ、現在具体的な法改正が進められておりますことは、私共が強く要望してきたことでもあ り大変評価しているところであります。しかしながら、中核市が総合的、主体的な行政を進めていく、あるいは地域の発展をリードするといった役割を果たして いくという観点からは、これまでの権限では十分なものといえず、更なる事務・権限の移譲が必要と考えております。
今回、貴委員会において、府県から中核市への移譲について再度具体的な論議がなされるとされる16項目について、個々具体的に現在の問題点、移譲による改 善点等を整理いたしましたので、これらの事務・権限の移譲と、所要の財源措置を強く願うものであります。


2.地方税財源の充実確保


中核市の役割に見合った税源配分と都市税源の充実について

地方分権を推進し、地方公共団体が自主自立的な行政運営を行うためには、事務・権限における自己決定権の拡充はもとより、財政面における自己決定権と自己 責任の拡充は、いわゆる車の車輪であります。このようなことから貴委員会の勧告、あるいは地方分権推進計画においても国と地方公共団体との役割分担を踏ま えつつ、税源配分のあり方を検討し、地方税財源の充実確保を図ることや、課税自主権を尊重する観点から法定外普通税の許可制度を廃止することなどの方向性 が示されましたことは、地方税財政改革の大きな一歩であると認識いたしております。
しかしながら、私共がこれまで要望してまいりました国からの地方公共団体への税源移譲を進め、国と地方との租税配分を実際の行政需要に則したものに改める 税体系の確立に向けた具体的な方策が示されていないことも事実であります。とりわけ、中核市は、自らの都市において総合的、主体的なまちづくりを進めるの みならず、周辺市町村を含めた地域の中核拠点として、広域的な視点に立って、地域の発展をリードするという重要な役割も担っておりますが、これらの財政需 要に対する財源は、中核市の事務配分の特例に伴う地方交付税上の措置を除き、一般の市町村と差異のない状況にあります。
地方税財源の見直しにあたっては、所得、消費、資産課税のバランスのとれた市町村税体系の確立を目指すとともに、広域行政の担い手である中核市について は、法人所得課税、消費課税などの都市税源の一層の充実確保が図られるべきであると考えております。

当せん金付証票(宝くじ)の発行による財源の付与について
当せん金付証票、いわゆる宝くじの取扱いについては、貴委員会の勧告、あるいは地方分権推進計画において触れられてはおりませんが、地方財政法及び当せん 金付証票法により、都道府県、政令指定都市及び戦災による財政上の特別の必要性を勘案して自治大臣が指定する市が公共事業等の財源に充てるために必要があ るときに自治大臣の許可を受けて発売することができることとされ、これらの地方公共団体では重要な財源の一部となっております。
中核市においては、広域都市圏の拠点として、高次の都市機能を整備充実し、また、地域における芸術、文化の振興を図る事業その他の公益の増進を目的とする 事業を今後とも積極的に推進する責務があります。したがいまして、政令指定都市と同様に「分権推進宝くじ」ともいうべき宝くじの発行を可能とするなど、宝 くじ制度においても、新たな財源付与について検討されるべきであると考えております。