福祉行政への関与の実態と見直し

公開日 1997年04月01日

地方公共団体にとって高齢社会の進展、人口の少子化に伴う高齢者福祉、児童保育などの福祉対策は、より一層地域の特性に配慮し、きめ細かに取り組まなければならない緊要な行政課題であります。
しかし、福祉行政に対する国庫補助金については、国の要綱・通達により細かい基準設定等の補助要件が一律的に規定されており、地域の実情に応じた事業運営や施設整備が困難な状況にあります。そこで、今後は地方公共団体の自主性を尊重し、地域の実情を生かした行政施策の展開ができるようにするため、国の要綱・通達による細部にわたる関与を廃止し、国庫補助要件の弾力的な運用とともに、申請手続の簡素化を図るべきであります。

 


事例1:在宅福祉サービス事業、社会福祉施設等施設整備に係る補助事業の見直し

在宅福祉サービス事業、社会福祉施設等施設整備等に係る補助事業は、国の通知等により、定員、事業の対象者、事業内容、職員の配置基準等の補助要件が、細かく全国一律に定められているとともに、事業の実施主体も事業ごとに限定されているため、地域の特性や住民のニーズに合わせた事業の運営や施設整備が困難な状況にあります。
そこで、補助要件を包括的なものにするなどの弾力的なものに改め、地方公共団体が地域の特性に合わせ、主体的かつ独自性を発揮しながら施策展開ができるようにすべきであります。また、社会福祉施設等施設整備に係る補助事業は、社会福祉施設を包括した補助制度ですが、同一の施設整備でありながら、整備内容により国の協議、申請窓口が異なっており、申請書類も窓口に応じて書類を作成するなど、事務処理が煩雑になっています。そこで、このような補助制度を法律ごと又は施策ごとに整理・統合するなどして、申請手続の簡素・合理化を図るべきであります。
 


事例2:保育所運営基準の見直し

保育所において、乳児保育、障害児保育、時間延長型保育サービス、夜間保育、一時的保育、地域子育て支援センターなどの特別保育事業を国庫補助金を受けて実施する場合は、保育室等の面積、保母等職員の配置、保育時間などについて補助基準が細かく全国画一的に定められており、女性の社会進出などによる住民のライフスタイルにあった、多様な保育ニーズに応えることが困難となっています。
そこで、地域の多様な保育ニーズにあった施策が展開できるよう画一的な補助基準を緩和し、地域の独自性を発揮させ、地域の活性化を図ることができるようにすべきであります。更に、国庫補助負担金を受けて実施するこれらの特別保育事業は、毎年度、実施協議を行ったうえで、国の承認を受けていますが、一時的な対象児童の変動により承認を受けられない年度があったり、承認を受けることができた場合においても、当該承認が大きく遅れるなど、事業の円滑な運営に支障を来しています。
そこで、このような単年度ごとの協議手続の弾力化・迅速化を図り、地方公共団体が毎年度、継続して事業を実施できるようにするとともに、円滑に事業運営ができるようにすべきであります。